Saturday, October 24, 2015
徳本峠越えの2日目は、上高地へ下山する前に、霞沢岳を往復することにする。 私がこの山の存在を知ったのは、登山を始めた20代の頃に読んだ新田次郎の小説の中でだったと思う。 また、それから何年か後に、岳人列伝という村上もとか著作の漫画でも厳冬期の霞沢岳を舞台にしたエピソードがあった。 気になる山ではあったが、その存在は余りに地味で、血気盛んな若き日の自分には、穂高の峰々を前にこの山に登る価値が見出せなかった。 頭の片隅にありながら訪れる機会のないまま年月だけが経ち、もう登ることはないだろうな~と思っていたが、その機会がまさか癌の治療を終えた今年訪れるとは。 前日の島々谷から登る徳本峠のレポートはこちらをチェックしてね。紅葉と渓流が素晴らしいです。⇒ “中部山岳 栄枯の歴史をたどる徳本峠越え(紅葉の島々谷川) Tokugotoge in Chūbu-Sangaku National Park” “中部山岳 栄枯の歴史をたどる徳本峠越え(二俣~徳本峠小屋) Tokugotoge in Chūbu-Sangaku National Park” 徳本峠から霞沢岳へは、樹林帯の尾根路で往復6~7時間を要する。標高差は510mであるが、アップダウンを繰り返すため累積標高差は930メートルもある。 予約した午後3時30分のバスに乗るためには小屋を早朝4時くらいには出発する必要がある。 真っ暗な中、ヘットライトをつけて小屋を出る。(上の徳本峠&徳本峠小屋の写真は前日に撮ったもの) 久しぶりに(本当に何十年ぶりだろうか・・)ヘットライトの明かりで登る山路だ。 小屋からは概ね樹林帯の中を行くトレイルなので暗くても危険な場所は無い。 小屋を出て、5分ほどで明神への分岐を右(北)に見送る。 そこからは西の尾根に取り付くが、いきなりスイッチバックの急登が続く。 暗闇の中、光沢のあるイワカガミの葉だけがライトを反射して光っていた。 急登を1時間ほどこなすと、ジャンクションピークに着く。 この辺りからようやく白んでくる。こんな朝焼けを見るのは何年ぶりだろうか。ちょっと感激だな~ トレイルは、展望の無いコメツガやシラビソなどの針葉樹林の中を行く。 ジャンクションピークから下った所に小さな池?湿地帯?があるらしいが、秋のシーズンには涸れてしまうのか、それらしい池は発見できなかった。 ジャンクションピークからは、長い下りが続き、南側の展望が開けたポイントからは霞沢が一望できる。 昔は、この霞沢も穂高へのアプローチとして登られていたというから驚きだ。 もちろん、あくまでバリエーションルートとしてで、メインは徳本峠越えであるが。 ジャンクションピークからおそらく200mくらいは降っただろう・・ってことは、帰りはここを登るのか~! なんて考えていると、小ピークへの登りとなり、木の幹に “P2” と書かれた2,261mのピークに着く。 2,261mのピークを少し降ると、左側が大きく崩壊した斜面が見える。 朝日は差してきたが、残念ながら霞沢岳には厚い雲がかかっている。 崩壊地の淵を通り、ザレ場を登ると、K1ピークが眼前に立ちはだかる。 トレイルは、中腹から右手側を巻いて登る。 K1ピークの東側をトラバースするように進み、途中に生えるダケカンバの根元をよじ登る。高度感もぐんぐん増してくる。 K1直下のトレイルは、ナナカマドなどの灌木帯で覆われた急坂で、ガレた斜面は丸太の階段で補強されている。登るに従って霧が濃くなり、歩いてきた山並みにもガスがかかっている。 胸突き八丁の急登にあえぎながらも、足元のコケモモの実にほっと一息つく。 この実は食べられるものなのか分からず(実際は可食)同行メンバーと、誰が先に試食するかワイワイと戯れた尾瀬のハイキングを思い出す。 ⇒ “尾瀬 富士見下から皿伏山を越えて色づく尾瀬を行く Fujimi to Ozenuma in Oze NP” 実際に食べた感想は、甘みの少ない酸味のつよい味だ。 そして、徳本峠小屋をスタートしてから約4時間強、ようやくK1ピークに到着。 K1ピークは、360度の大パノラマが広がる・・はずなのだが・・霞沢岳方面も手前にあるはずのK2すら見えない。当然、北に見えるはずの穂高連峰も見えない。 K1ピークから霞沢岳までは往復約1時間であるが、この霧では展望も無いだろうし、私はピークにこだわるピークコレクターでもない。帰りのバスの時間もあるので、ここで引き返すことにした。 ちなみに、ピークを現す “P” ならわかるけど、なんでK1とかK2という “K” のアルファベットを使うのかな? ヒマラヤのK2という山はカラコルム山脈にある2番目に高い山ということで、 Karakoramのイニシャル “K” が使われているけど、もしかして、これを真似て霞沢=Kasumisawaの “K” かな?だとしたら笑える。 なんて、愉快な想像をしながら20分ほど霧がはれるのを待ったが、はれないので下山にかかる。 ところが、おやおや、私が下山にかかると、先ほどまで霧に覆われていた空が明るくなってきた。どうも霞沢岳は私のことが嫌いなようだ。嫌いな女が去ったので、そのベールを上げたのか!? K1の急斜面を降りながらギリギリ穂高連峰が見えた。 航空気象学もかじっているので、穂高連峰上空の雲の形が気になる。 “Virga” という雲かな~日本語では何ていうのかなぁ~・・・尾流雲かな? この雲は、雲から落ちる水滴や氷の粒子が地面に到達する前に上空で蒸発してできる状態で、雲の周辺の空気が低湿度で、ある程度温度が高いことを意味する。 空を飛ぶには厄介な雲だが、今日は良いお天気になるぞ!ってことで、霞沢岳もこの時間から晴れていくもよう。 ほら、視界が良くなった! 朝は霧に覆われていた霞沢岳が見えてきた。 朝からこの天気がほしかったな~ アップダウンの多いこのトレイルは下山も登りと同じくらいに時間がかかる。でも朝には見えなかった樹林帯の中の植物たちに会えるので、さほど苦にならない。 ヘットライトを反射していたイワカガミをはじめ、赤い実をつけているツルリンドウなどなど。 ジャンクションピークへの登りでは、写真左のロゼット状に葉を広げる植物が群生していた。後でしらべたら、なんとショウジョウバカマではないか!早くも中心に芽のようなものがあるね。 ショウジョウバカマは、湿原に他の高山植物より一足早く春の訪れを告げるようにピンクの花を咲かせる(写真右) 長い登り返しを終え、ジャンクションピークに到着。すっきり眼下の山並みが見える。 そして、ジャンクションピークから徳本峠への下りでは、朝は真っ暗で見えなかった前穂高岳、奥穂高岳の高峰がそびえる。上高地から見る穂高とは一味違う眺めだ。 そのすそのには梓川の流れが白く蛇行してる。 徳本峠との分岐(右が徳本峠)に戻る。 K1までの往復に約6時間ほどかかった。霞沢岳まで往復するなら7時間はみておきたい。 下山は左のトレイルに進み、白沢沿いの路で明神まで行く。 徳本峠から明神間のルートは、よくメンテナンスされているので問題ない。 分岐からしばらくは展望のきかない樹林帯の路をスイッチバックに降る。 すぐに白沢支流の黒沢に沿って急坂を下るようになる。 30分ほど降ると沢(水場)がある。 水場からさらに下って2つの沢を横切れば、眼前に明神岳が迫る。 対岸の山肌にみえるダケカンバの白い幹が美しい。 峠から1時間ほど降ると傾斜が緩み、路幅の広い針葉樹林の森(林道)に入って行く。 林道は約1kmくらいあり、あたりが自然林になり明るく開けてくれば明神は近い。 明神の徳本峠登山口である白沢出合に到着すると、横尾街道(上高地~横尾までの林道)に合流するので、槍ヶ岳や穂高岳への登山者、明神散策の観光客で大賑わいだ。 白沢出合からは明神岳の峰々が天を刺すようにそびえている。 白沢出合から西に少し行ったところに明神館があり多くのハイカーや観光客で賑わっている。 明神館から明梓川を渡った対岸に明神池がある。せっかくだから明神池に立ち寄ることにする。 明神池を見るには、明神館の北側に掛かる橋を渡り、嘉門次小屋の横を通って穂高神社奥宮で拝観料(¥300)を払う必要がある。何故なら、明神池は神降地らしい。まあ、山岳宗教の一種なんだろね~。 宗教とは無縁の私であるが、神社の私有地?に立ち入って美しい景色を見させていただくということでお金を払ってみさせてもらった。 明神池を訪れるのはおそらく4度目だと思うけど、そのうちの2回は残雪期&冬期だったので(神社は閉鎖していた)お金は払っていない。神様、タダ見しちゃってごめんなさい。 日本の神様ってお金が大好きだよね~ カラマツがいい仕事してますね~ 水草がいい仕事してますね~ ちなみに、ここにはイチョウバイカモという珍しい水草があるらしい。 明神から上高地バスターミナルまでのトレイルは過去に何度となく歩いている路だ。でも、よく考えてみると残雪期の5月と夏か冬にしか通っていない気がする。 この黄金色の明神岳を見るのは初めてだ。 カラマツの落葉が、トレイルに黄色の絨毯を敷き、沢を黄色く縁どっていた。 小梨平も黄金ワールドだった! 週末の上高地は、周知の事実の混雑ぶりなので、人気スポットのカッパ橋などはスルーした。 霞沢岳に行かなかったので、1時間の時間調整に明神池に寄って、15時30分のバスに調度よい具合にバスターミナルに到着した。 2日間の徳本峠越えの山旅は、栄枯の歴史に思いを馳せ、紅葉に心躍らせ、渓流のせせらぎに心が洗われる旅だった。 私のこのトレイルへの評価: 5★ 中級者向け 行程距離: 約17km(徳本峠小屋‐霞沢岳往復(約9km)‐明神館‐明神池‐明神館‐小梨平‐上高地バスターミナル) 標高差: 約510m gain / 約1,100m down 実動時間: 約10.5時間 (休憩、明神池散策込み) この情報は役にたちましたか? 下の画像をクリックしていただけたら嬉しいです。 ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノ ↓ Thanks for reading my article. Please click the photo below, so that your access can be counted. にほんブログ村 にほんブログ村
by dream8sue
| 2015-10-24 02:05
| 中部山岳国立公園
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by Sue スー ブログジャンル
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