下仁田町 群馬チームで登った高立一本岩登攀記     Rock Climbing at Takadate Rock in Shimonita, Gunma

Sunday, April 8, 2018
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群馬県下仁田町の高立(たかだて)集落の奥にタワーのように立っている、高立一本岩。
高さ100mのこの岩峰のてっぺんに立ってみたいと思うクライマーの本能に突き動かされて・・登ってしまった! 070.gif

おりしも長いブランク(15年?)からクライミングを再開して3ヶ月。
昔取った何とかで簡単に登れる壁ではないのは分かっていたが、同行メンバーの力を借りて何とか登ることができた。

知り合いのクライマー達、東京、千葉、埼玉、山梨と関東甲信全域に声をかけたが、結局集結したメンバーは地元、群馬チーム3名であった。
登攀メンバー: 松本浩(高崎市)、飯塚康弘(藤岡市)、名塚“Sue”好子(前橋市)



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高立一本岩へのアクセスは前回の高立一本岩偵察記(下記リンク)を参照してほしい。

一本岩は、2007年に山野井泰史氏、大内尚樹氏、山野井妙子氏らによって初登されている。 
今回、私達はその初登ルート “錦木” をトレースした。

ダートに強いSUV車で一本岩が見える石祠の岩場がある広場まで入った。
林道は非常に落石が多く、石を排除しながら進んだほどだ。普通車両は侵入しない方が無難だろう。 045.gif

一本岩が青空にそびえている。 偵察時よりも天気は良いが、冷たい風が吹き気温が低い。 
広場で装備を確認していると、まさかの、カザハナが舞っているではないか! 005.gif

そういえば、高立集落の街頭温度計は3℃だった。・・・(*_*;タラ-
“寒いから登るのやめて温泉入って帰ろうか~”と弱気の発言をするSue。 賛同者なく、却下!  145.png




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しかし、確かに寒い日ではあるが、3月の偵察時には、まだ雪が残っていた矢川川のまわりにはヒトリシズカが咲き、 056.gif
広場にはスミレやハシリドコロが咲き、岩場にはミツバツツジが咲いている。 056.gif  確実に春は訪れている。 179.png



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事前に山野井氏からいただいた、錦木ルートの写真と照らし合わせて、それと思えるクラックを探す。



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西側のリッジから写真右下の影になっている岩場を右側から回り込んで、一段上の取付きへ登る。



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前回の偵察時にみた南西面の “ボロボロの泥壁には、凹凸があるもののクラックと言うほどの溝はない。”
と思った壁には、壁の中間部分まで伸びる顕著なクラックがあった。 045.gif
錦木ルートで間違いないようだ。



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1P目の出だしは、ブッシュの生えたクラック。



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10mくらい登ったあたりの、脆いハングが最初の核心。
核心と言っても岩登りのグレード(5.7)ではなく、核心は岩の脆さである。 140.png

掴んだホールドは片っ端からボロボロと剥がれていく。 149.png
そして、ホールドよりも厄介なのが、スタンスが信用できないことだ。
まともに足を置けるスタンスが無い、あったとしてもいつ欠けるかわからないという強迫観念にじりじりと神経と体力を吸い取られる。

どうしたものかと、行きつ戻りつすること数回、意を決して固そうなスタンスを見つけ、ジリジリと身体を上げていく。
ハングの上の脆いクラックにキャメロットをセットして、ようやく一息つく。 042.gif


北山真氏が放棄し、山野井泰史氏にして “非常に悪かった” と言わせた壁の中に私は身を置いているのだ。
う~ん、西上州だ!
物語山のメンベ岩や、妙義山御殿東壁など、西上州の脆くて悪い壁には免疫ができているつもりだったが、そんなものではない最強最悪の危うさがここにある!



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どうにか最初の核心を越え、クラックの出口に接近する。 が、この出口の岩も浮石を積み木したような不安定さである。
触れば落石を起こし、自分も落石と共に西上州の空に舞うのかと目の前が真っ暗になる。 149.png

アンサウンドなんて生易しい言葉では表現できない。
一本岩全体が風化、崩壊しているのだ。
こんな壁を登るのは命がいくつあっても足りない、クレイジーだ! 149.png

錦木ルートとは別に、南東面にも先人がセットしたと思われるボルトラインがあるが、
あまりの脆さに途中で断念している。 無理もないことである。
脆くてもかろうじてクラックラインなら登攀の可能性があるが、フェイスなんて論外だ。 135.png



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万が一の墜落に備え、カムを決めようと周囲を探ってみると・・何と有難いことにハンガーボルトが1本打ってあるではないか! 113.png
初登者の皆さん、ありがとう。 その労をたたえて金一封を贈呈したいくらいです。 145.png

ボルトの他に山野井氏がセットしたというL字アングルも2本残されていた。



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ハンガーボルトに勇気をもらい、浮石帯にそっと、そーっと・・突入。
どうにか、クラックからぬけ出して、幅10㎝くらいのバンドに這い上がる。

しか~し、アンカーポイントは8mくらい右にあるクラックに生えた灌木だ。
この8mのトラバースが身の毛が逆立つほど悪い! ヒィィ((ll゚゚Д゚゚ll))ィィ!!!

鉛筆くらいの太さの灌木の根元にスリングを巻き、そのスリングをホールドにしてカニの横ばい。
しかし、ここでもスタンスが信用ならない。 140.png
足元からくずれそうな脆いバンドに、The Lord of the Rings の1シーンが脳裏をよぎる。 
“スタンスが崩れ落ちる前に、8m先の灌木に飛び移ればいいのだ” と自分に言い聞かせてトラバル。 008.gif 



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脆いバンドは、崩れることは無かったが、枯れ草で滑るし、身体を保持できるほどの固いホールドも無い・・ 140.png
3人ともこのトラバースでセミになる。 ミ~ン、ミ~ン、ミ~ン (-_-;)

3人がこのスリングをホールドにして、何とかトラバースできた。
そして、青いスリングは残置された・・・ (^.^)/~~~サヨナラ~



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ビレイポイントは、体重を預けるにはいささか心もとない灌木(アブラチャンのようなイエローの花を咲かせていた)
その灌木に静かにハンギングビレイする。 140.png

浅間山からの寒風が容赦なく私の体温を奪う。 助けて~寒いの嫌い! 143.png
寒いので汗は出ないが、ビレイ中もスタンスが何度も崩れて冷や汗をかきまくった。 008.gif 



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気分転換に対岸の景色を撮影。 
“新緑が綺麗だな~” なんて・・思う余裕はなかった。 105.png
今こうして見て、西上州の春を感じるな~。 041.gif



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2P目は、写真では分かりづらいが、灌木の生えたクラックの先に顕著なチムニーがある。
下部は広く開いているので、リードはキャメロットの6番、5番を決めて登った。 
上部にいくにしたがって狭くなり、最後はチムニーからカンテに身体を出して越える。



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チムニーの上は、西上州お決まりのイワヒバ帯。 149.png
ロープがイワヒバに食い込む、食い込む・・ 105.png 



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最後はテーブル大の浮石? 浮いてるよね~? 140.png
そっと、そ~っと触って、さっさと横をすり抜ける。



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2P目の終了点へ這い上がるSue
そして、先鋭クライマー2人に迎えられ、3人でハイタッチ! 166.png 024.gif 167.png

一本岩のてっぺんの3人。
藪岩のてっぺんではあるが、おそらくまだ10人も立った人はいないだろう。

もしかして、第2登かな? 039.gif 
このブロブを読んで、初登者以外で私達より先に登られた方がいたらお知らせください。



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一本岩のピークからは、対岸の岩山の奥に、先日登った御場山が見える。 177.png



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一本岩のピークに立ち、笑顔で Thumb Up する2人の Crazy Guys!
松本(右)と飯塚(左)



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下降ボイントを探る飯塚(右)とSue(左)のバックには西上州の山並みが・・ 177.png



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10年前の山野井氏たちのものと思われるスリングが大木の根元に残置されていた。
う~ん、彼らは6mmスリング1本でラペルしたのか~・・(゚д゚)!

自分も昔ならやっただろうが、今の私の防衛センサーは過剰反応する。
はい、今なら8㎜のダブルスリングに鉄輪まで付けて、もれなく残置いたします。 041.gif 



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初登者たちと同じ立木を使って、50mラペル、1回で取付きにドンピチャに降り立つことができた。



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装備をまとめて西側の斜面から林道へ降る。
西陽に一本岩の北壁が照らされている。 一際、高く大きく思えるのは気のせいだろうか。 177.png

3人で2ピッチ、下降も含めて約6時間(10時30分~16時30分)の登攀であった。



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林道からは川の対岸にも林立した岩峰が見える。 う~ん、西上州だ! 150.png



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石祠のある岩場に戻り、登攀具を整理する。
登った一本岩が何事も無かったように私達を見下げている。
そのタワーを見上げて、しばし感慨にふける松本。


フリークライミングがオリンピック種目になる今日では、こんなリスキーなクライミングをする輩はめっきり減った感がある。
しかし、本来クライミングとは、いや、登山とは “あのてっぺんに立ちたい” から始まったものではないだろうか。
そして、未知の壁に挑むことの凄さを肌で感じた。 改めて初登者たちへ敬意を表する。


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by dream8sue | 2018-04-08 21:21 | Rock Climbing | Trackback | Comments(8)
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Commented by pochi23 at 2018-04-10 22:30 x
とうとう登りましたね、おめでとうございます。
相当ボロボロだったようですね。
新ルートの開拓は、どうしましょ。
Commented by dream8sue at 2018-04-10 23:54
> pochi23さん
いや~・・悪かったです~ (*_*;
この壁にフリーのルートなんで不可能です。
仮に作っても、絶対にホールドが欠けますからグレーディングにならないですよ。

Commented by ボッケニャンドリ at 2018-04-11 08:45 x
無事で何よりでしたね。
この岩を知ってる知り合いに聞いたら「あれは止めた方が良いよ」と
(^^;;;
Commented by ブライト at 2018-04-11 18:05 x
ご無事に帰還できて何よりです
見ている方も ヒィィ((ll゚゚Д゚゚ll))ィィ!!

Commented by dream8sue at 2018-04-12 11:38
> ボッケニャンドリさん

>>この岩を知ってる知り合いに聞いたら「あれは止めた方が良いよ」と

その方に激しく同意いたします。 止めた方がいいです。 
私も2度と登らないと思います。 (;^ω^)
Commented by dream8sue at 2018-04-12 11:40
> ブライトさん
この壁の登攀を通して、西上州の真髄を見た気がします。
西上州エリアをよく歩かれているブライトさんも、お気をつけください。

Commented by mountfujisan at 2018-04-16 18:12
兜山で、クライミングの練習をしているメンバーを見てきました。そんなおり、このブログ、本格的なクライミングが、いかに難しいかわかりました。楽しく読ませて頂きましました。
Commented by dream8sue at 2018-04-17 08:46
> mountfujisanさん
兜山でもクライミングの練習ができる場所があるのですね?知りませんでした。

一本岩は、岩登りの練習場とは別に、いわゆる “本チャン” と言われる、絶対に落ちてはいけない岩場でのクライミングです。
しかも、他の本チャンの岩場よりも、極めて岩質が悪いので、ただ単に岩登りが上手いだけではなく、悪場を登るセンシィティブな登り方が要求される岩場です。

登攀記、楽しんで頂けたなら幸いです。 It's my pleasure. o(*゚∀゚*)o
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