大雪山 花と火山の大雪山をいく（後編） Mount Daisetu in Daisetsuzan National Park

Friday, July 26, 2024

蝦夷梅雨と呼ばれるレイニーシーズンに北海道に上陸し、入念に天気チェックして、ようやく　大雪山　を歩くことができた。　

大雪山旭岳ロープウェイ（RW）を利用する王道の大雪山ループトレイルで、
RW姿見駅（山頂駅）から旭岳を登り、北海岳を経由して黒岳から20分ほどの距離にある　黒岳石室　に着いた。

黒岳石室で一夜を過ごした翌日は、中岳を通って中岳温泉に降り、裾合平経由でRW山頂駅に戻る。


RW山頂駅から黒岳石室への登高は　前編　をチェックしてね。



前日、宿泊地の　黒岳石室　に着いた私は、テント設営後ひと休みしてから　黒岳　を往復した。 　

黒岳石室は、大雪山の東の玄関口、層雲峡から　黒岳ロープウェイ　を利用して黒岳経由で来れることもあり、大雪山系の中で最も利用者が多い避難小屋である。
また、夏山シーズン中は管理人が常駐している数少ない避難小屋でもある。
利用料は　石室：2000円/大人　　　テント：500円/1人



黒岳石室の東側からトレイルに進むと、すぐ裏手の涸れ沢には、色鮮やかな　エゾツガザクラ　の群生をみる。 　

続いて標高差50mくらいの石だらけの斜面を登るのだが、そこは　エゾツツジ（写真）　の群落であった。 　
日本アルプスなどでは見ることが出来ない　エゾツツジ　は、ツツジのイメージを見事に裏切って、背丈は10-20cm程度の小さな花である。



岩の隙間で命をはぐくんでいる、けな気な花は、本土でも見ることがある　イワギキョウ　だね。 　　ガンバレ！ 　



今回の縦走路では、大雪山系の固有種である　エゾイワツメクサ　もちょくちょく見かける。 　



高山植物を愛でながら登っていくと、眼前に　黒岳　の頂が見えてくる。
北西面が急峻な　黒岳（1984m）　は、どことなく孤高の山みたいでカッコいい。 　 　



振り返れば、桂月岳　や　翌日歩く予定の大雪山の山々が横たわっている。



さて、黒岳ピークハントを済ませて黒岳石室に戻ると、テント場に望遠鏡が立っていた。
これは、対岸の斜面で活動しているヒグマを観察するために小屋のフタッフが置いたもので、ヒグマをこの目で見ることができた。


大雪山縦走の初日は、地獄谷や御鉢平の躍動する活火山の様子や、たくさんの蝦夷の花を見ながらの稜線散歩ができた。
テント場がオーバーユースになるほど登山者であふれかえる日本アルプスとは違って、
大雪山のメイン縦走路でありながら大自然の雄大さと静寂の中に身を置ける素晴らしい環境である。

テントの前に腰を下ろし夕焼けに染まる山々を見ながら、ひとりワインを飲めば、疲れた身体は自然と夢の世界へと誘われる。 　
そして、静かに大雪山の夜が更けていく。 　



日が変わり、迎えた翌日は朝から快晴の良いお天気。　ピーカン！
静かなテント場でぐっすりと眠れたせいか、前日よりも体調が良い。　さあ、今日はどんな自然に出会えるかな～？　　　



黒岳石室を後にして　雲の平　と呼ばれる白水川源流部に広がる草原を西に進む。 　



左手（東側）には、前日に越えてきた　北海岳　のシャープな山容が見えている。



え！何々？このツンツンと飛び出た可愛い花は？　



チシマツガザクラ　という常緑小低木。　ツガザクラと言うがなんとツツジ科だ！
北海道でなければ見られない高山植物の多さに感動の連続だ！　 　



雲海の上に高山が浮かび上がってきた！　アウェイ過ぎて、大雪山系の山なのか、遠く北見山地の山なのか全く見当がつかない。 　



お鉢平展望台　からは有毒温泉の　御鉢平　が間近に見られる。



展望台から標高2140mまで登りあげたピークが　北鎮岳分岐　で、分岐から北に標高100mほど登れば　北鎮岳　である。

分岐に咲く　エゾウサギギク　のイエローがとても目立つ。　



北鎮岳分岐を西へ、左手に　御鉢平　を見ながら進んでいくと、程なく　中岳（2113m）　を通過する。　　
Woｗ！　まさに月面のオブジェみたいな溶岩が転がっている。 　



そして、中岳温泉と間宮岳の分岐（中岳分岐）に至るまでの1km弱の山稜には、
イワブクロ、　コマクサ、　エゾイワツメクサ、　クモマユキノシタ　などの花が大雪山の短い夏を謳歌するように咲き乱れている。 　



中でも、今回の大雪山ハイキングで知った　クモマユキノシタ　が私のいちばんのお気に入り。　 　
この花は北海道にだけ咲く花らしい。　どうりで日本アルプスなどで見たことが無い訳だ。



御鉢平　を流れる有毒温泉が、まるで白い血管のように大地をはっている。



やがて　中岳分岐　に着く。　
間宮岳方面にいく斜面には　コマクサ　の群落があり、コマクサに誘われて思わず間宮岳まで足をのばしたくなる。 　



OH!　レアな白花の　ヨツバシオガマ　を発見！　



中岳温泉には分岐を右（西）に進む。　裾合平の先にいくつも点在する池や沼群が見えるが、そこも興味深い山域だ。



眼下に見えるピウケナイ川の源流部へと降っていくと、中岳温泉がある。



野湯の　中岳温泉　は、けっこう熱い湯がポコポコと勢いよく湧いていて、ほんの数分足を浸けているだけでも身体が温まってくる。



行きずりのハイカーたちと足湯に浸かりながら、互いの労をねぎらう。　これも温泉効果がもたらすコミュニケーションだね。



さて、温泉で足の疲れを癒したら、裾合平を目指して下山しよう。
ピウケナイ川の支流には、葉がとても大きい　エゾリュウキンカ　の花がまだ残っていた。



程なく旭岳北面に広がる草原へとかわり、裾間平までの間は、まさに天空の花園。
風に揺れる　タカネトウウチソウ　のバックに見える山は　大塚　小塚　の2つのピーク。



旭岳のすそ野に　チングルマ　のお花畑が広がっているなんて知らなかった！。　ここまで広大な群落を見たのは始めてだ。　
残念ながら今年は花期が早かったようで、すでに花が終わって綿毛になっていた。　花期に改めて訪れたい場所だ。 　



おっと、忘れてはいけない　ヨツバシオガマ　も鮮やかなパープルの花を咲かせているじゃないか。



やがて　裾合平（すそあいだいら）　の分岐に到着。　
ここからRW姿見駅（山頂駅）まで、まだ3kmほど歩くので、裾間平の休憩ポイントではしっかり休んでいこう。 　



裾間平からRW姿見駅（山頂駅）までは涸れ沢をトラバースしながらハイマツとササ原のトレイルを歩く。 　



ササ原の中には　エゾオヤマリンドウ　が咲いていた。　
本土では オヤマリンドウ は秋の花のイメージだが、北海道では夏の花と秋の花が同時に見られる。



こちらも秋の花の定番　ミヤマアキノキリンソウ　が、花のトレイル歩きのフィナーレを飾るかのように群落をなして咲いている。



そして、　夫婦池　の畔に咲く　エゾイソツツジ　も北海道の固有種らしい。　
小さな白い花が球状に集まって咲く綺麗なツツジだ。　長い雄しべが特徴的だね。



夫婦池までくれば、RW姿見駅（山頂駅）はもう目の前だ。


さてさて、2日間にわたる大雪山の縦走は、お花見山行としては、もうお腹いっぱいだ。
また、活火山らしい大地からの噴煙の迫力に圧倒され、足湯も堪能して、苦手だった火山への認識が少し変わってきた。

北海道の屋根と言われる　大雪山　を歩くことが出来て、まずは今回の北海道遠征の目的をひとつ達成した気がする。
次なるイベントは、北海道での岩登りと沢登りだ！　


本ルートのマップ は下記のヤマレコのリンクをクリックしてね　(^_-)-☆　

私のこのトレイルへの評価：　5★ 初級～中級者向け
距離：約21km　　　標高差：約700m （累計標高差：約1450m）
1日目：宿泊地での休憩3時間込で約11時間 （旭岳RW山麓駅 7:00=旭岳RW姿見駅 7:30‐旭岳 10:30/10:50‐荒井岳 12:30‐松田岳 13:00‐北海岳‐黒岳石室 15:00/17:00‐黒岳‐黒岳石室 18:00）
2日目：休憩時間込で約6.5時間 （黒岳石室 5:30‐お鉢平展望台 6:30‐中岳 7:30‐中岳温泉 8:50/9:10‐裾間平 10:00/10:10‐旭岳RW姿見駅 11:30=旭岳RW山麓駅 12:00）


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